飲酒と執筆

あまりに執筆捗らないのでメモを残してみる

お正月前後に読みました(1)

大火砕流に消ゆ

大火砕流に消ゆ

 著者がオウム云々で有名になられる前に書かれたルポ.ネタは火山の話というよりは,マスコミの話です.どのような経緯で事故が起ったかが述べられ,さらに「定点」で火砕流に巻かれた幾人かのカメラマンの人となりと,「定点」に至るまでの道程が描かれる.マスコミ対応もあって地元の消防や警察,タクシー運転手なども巻き込まれているということや,火砕流に関する知識の欠如(に基づく見込みの甘さ)など批判されることはあるが,基本的には好意的に書かれている.原因が「過熱報道」などと言う言葉で括れるようなものではないとのことである.
 批判されているのは,事故以降のマスコミの対応である.完全に萎縮してしまって,避難勧告地域などに一切入らなくなったり,あまつさえ,少し変があったら,島原から一斉に逃げ出したり,自衛隊に写真撮れだのなんだの情報提供を頼ったりで,まともな報道がなされなくなった.さらにもっと卑怯な事柄として,読売、朝日新聞が相次いで,フリーのジャーナリストが立入り禁止地域内に入ったルポおよび地元のカメラ趣味の人が立入り禁止地域で撮った写真が週刊誌に載ったことを取り上げ,「警察が調査」等々と報道してそうでもなくとも忙しい警察を焚きつけたことが詳しく述べられ,批判されている.前者は取り調べが為されたうえで不起訴に.後者はお咎め無しになったようだが,他にもカメラマンらが取材に入った例があるし,地元の人も必要に迫られて入ることがあるにも関わらず,新聞が大々的に書いたこれら2件を除いて,スルーであったとのこと.筆者は後者の記事を書いた記者に突撃を掛けているが取材拒否,その上司に話しを聞いても堂々巡りでかわされる,ということで,さらに情けの無いことです.
 というわけで,あまり「火山本」ではないが興味深いもので,絶版は残念.でも図書館には結構入っているし,古本も出回っているので,現状では探すのに苦労する情況ではないようです.